2017年01月19日

慰留

自分が若い頃の看護学校は、ほとんどが同年代だった。年代が上の人や違う職業からナースになろうと転職して来た人と言えばクラスに一人か二人居るくらいで。

ところが、このナースという職種の、さらにその中にある様々な職種を体験してみると、自分のときのような20代ではなくて40、50の人が転職するきっかけとなる出来事に遭遇したり、あるいはベテランだろうなと思う年齢の人がつい3〜4年前ナースに転職したばかりというようなケースにも出会うようになった。

時代的な状況の変化でもあるだろうし、はたまた未体験の分野の経験を積んで来たせいでもあるのだろう。

訪問入浴も6年ほどやって少し年季が入って来た頃、また違う分野のナースをやりたくなって人生初めての派遣稼業を体験したのが昨年の春。

そして訪問入浴で目にして来た在宅の介護とはまた違って施設での介護の世界を知るようになった。

いくつかの場所を派遣で流れて行って色んな思いを味わったのだけど、自分自身は変わっていない。

そしてそのまんまで今のところに出会った。

それまではあたかも心理学の基礎課程のごとく、広く浅く楽しく色んな場所の色んなやり方を学ぼうと思っていたのだけれど、これまたやはり心理学に例えるなら上級コースまで行ってみよう的な心境になったのかも知れない。

何となく半端が嫌なんだろうな。なんたって精一杯やっても人間はどこか半端で未熟でのびしろが残っているものだから。

そしてその場所で契約する一か月ほど前に私より5つほどお若い常勤さんが入って来た。

それが彼女との出会いだった。

色んなことがあり、ちょっときまずい思いを互いにすることもあった。

そして一緒にコーヒーを飲んだり、仕事の話が大半ではあるものの、段々恋愛観や結婚観や、私の昔の仕事の様子を訊いて来てくれたり、果ては子供のことまで話したり質問したりして来てくれるように来るようになった。

それが全然嫌ではなかったのだよね。先に彼女は色々自分のことを話してくれていたということと、彼女がこういった仕事以外の話をするときには、必ず何か自分の中で立ち止まって考えているときだったから。

それはさておき、互いにきまずい場面も沢山あったというのは、同じアラフォーであっても彼女が愚痴や絶望を一日中口にしているとき。

良いところも沢山ある仕事ではあるものの、確かに境遇は過酷なので仕方がないのだけど。

わかるけど、人や環境は瞬時には自分の思い通りにはならない。今は目の前のことやろうよと思って私の方が走り回っていたり。相手は話に参加してくれないと思い、私は動いてくれない思ったのだろう。

ただ、言っていることはほとんど正しいのよね。それは分かっているんだけど、周りも皆そう考えろという思いが出て来たら、それはまた違った問題が出て来る。

そしてこの数日間彼女と二人きりだった。

そうすると、前から分かっていたのだけど、彼女の頭の切れの良さが分かる。

私がこれやっとこうと思ったら、今丁度それをやっているところだったりするから。

素直に「はえーなー。」と舌をまく。

頭がいいだけでなくこうして物理的に不可能なことをやってのけようとする部分もあったのね。

トリプルで忙しかったのだけど、彼女が言いたいことがその仕事ぶりでよくわかって来たような気が余計にする。

そうかあ。これを全員に求めるところがあるんだな。

しかし一方では、物凄く勘の良い子でもあるので「あ、愚痴ばっかり言っちゃダメですよね。」と言葉を切ったりしている場面も増えてきた。

あれ?なんか我慢している?

非言語でも全て察しているのだなあと思った。

そこは私が悪かった。でも何もやってないときは言いたいこと我慢しないでよ。

私はどこに居ても誰かが辞めてしまう場合、「そうか。」で終わらせる場合が大半だった。

ところが今は、ほんとにやめんの?と訊いてしまっている自分が居る。

自分とは全く違う能力を持っていて、タイプも違っていて、それでも最近互いに面白いところを見つけては笑っている感じが貴重な時間だと身に染みたせいもある。単なる戦力としてではなくて人として居て欲しいと思っている。

辞める理由は今まで山ほど聴いて来たし、そりゃそうだよなと私も思うので、何回も訊いてごめんねと慰留をする自分を諫める。

一月は嵐のような日々が続いているのだけど、喧嘩したり互いの言い分が通じ合えなかったり。

と思いきや、「あ、それってそうやるんだ。」と互いに感心したり。

そしてこの三日間は何でも二人で協力し合って頑張れた。

そうなると二人のときにだけにする昼食後のコーヒータイムの時間に「尾崎さんはいつまでここに居るの?何月までここに居てくれるんですか?」と訊かれたので、そんなのわかんないよ。今月かも知れないし来月かも知れないし。先のことは分からないよと答える。

すると「三月までは居ますか?」。

いや、だから、分からないってば。

そんなやり取りをした後半日くらいしてから思いついた。

もしかしたらあの質問は”居るのなら辞めるのやめようかな?”だったかも知れない。

そう思ったときには後のまつり。その日の帰りの電車が走り出した。

そして今日は「次のところ、決まったの?」とこちらから訊いたところ「いいえ。」ときっぱり。

「半端な時期だし採用してくれないもん。」

じゃあ、もうちょっといれば?と言ってみたのだが。

笑顔になった。

とは言うものの、彼女にとってもまたストレスフル過ぎる。私より5つも若いんだもんね。きっとまた別の場所で良いことがある可能性の塊だもの。

今日も彼女は月が照らす寒空の下、帰っていった。
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今日も最後まで読んで下さってありがとうございました。あなたにとって良い一日でありますように。

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posted by かおる at 06:00| Comment(0) | 看護 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする