2017年02月13日

そか。皆、思っているのか。

誤嚥した方をすぐに吸引出来る場所へ連れて行って、吸引器を持って来ようとする大御所様から奪うようにして利用者様のところへ持って行ったときのこと。そう、利用者様のことも吸引器も奪い取るようにして急いだ日。

無事だ、良かった・・・ということが感じられたあと、独特の空気が辺りに漂っていた。

この空気、何度でもどこででも味わったことがあるんだよね。周りの人にひかれるくらいというか。

その後、肺炎を危惧して熱を臨検したり聴診器で胸の音を聴きに行ったりしているときも同じ空気で視線が集まる。私は何にも見ていないように見えるらしいけど魚眼なので、悲しいかな、皆が感じていることも分かってしまうんだよな。

でも、仕方ないじゃない。

そしてお粥にされてしまったのが夕方だったらしいのだが、翌日の回診の際、ドクターにも胸の音を聴いて貰ったり診察して貰おうとフロアに向かうときのこと。

居室に居るのかフロアでTVでも観ていらっしゃったのかが分からなくて一瞬きょろきょろしたが、介護の男の子がフロアの前に立ちはだかる。こちらを向いて。

その子をよけるようにして視線を走らせ「〇さん、そっちにいらっしゃるの?」と訊くと「居るけど、大丈夫ですよ。」とかすかな声が聞えた。つまりは診て貰う必要がないと。

どけ。

思わず突っ切って回診車を進めるとさすがにどいてくれた。

轢かずに済んで良かったよ。

彼は日々たゆみなく、かいがいしく面倒を観ている人間なので、そりゃあある程度の異変は分かるだろう。ええ、誰よりも。

そして、もしかしたらナースやドクターか、もしくは医療に対する不信感やトラウマ的なものもあるだろう。ひどいことばかりされているようにしか見えないもんね。吸引やら処置やら私たちの仕事って嫌われるようなことばかりだ。

私を先頭にしているドクターや大御所様の前に立ちはだかろうとした彼はとても勇敢だった。でも、私、もっと勇敢なの。ただし、勇敢になる分野や瞬間が特化されているけれど。

利用者様には彼らの暖かい介護を受ける権利も医療を受ける権利も等しくあるから。

その時、介護の女の子が大御所様に「〇さん、〇さん。あの、△さんが転んだみたいで、居室に座り込んでいたんです。」と後ろで言っているのが聞えた。

前日に誤嚥した人の診察中に大御所様が私に言う「あの。。。これ終わったら△さんも診て貰うと良いかもです。尻餅ついたみたいだから。」

けれども、その尻餅をついたらしき人をその介護の子が連れて歩いて来てしまっているので思わず「ボディチェックはした?」と訊いた。ほんの5メートルほど離れた場所のその子に。

すると、普段はちっとも通らない自分の声が物凄く大きく響いているのに気がついた。

皆がピリッととして下膳していた子がわずかに動きを止めて振り返るような仕草が目に焼き付いた。

ああ、そういう感じなんだ。そうなってしまうんだ。

「し、してないです。」

じゃあ、居室に横になっていて貰える?下の階の人をもうお一人診て貰ったら戻って来るから。

そう答えて言葉の通りにもう一人診察して貰ってあがって来たら、まだ居室に丁度入っていくところだった。

元々歩くのにとても時間がかかる人だから当然だろうとは思う。

するとドクターがドアを閉めて「いいよ、いいよ。横になると起きるのがまた大変だろうからこのまま見ちゃうね。」と臀部を確認してくれた。本当に老人にも優しい先生で。

ふと介護の女の子の顔を観ると涙を浮かべているので絶句しそうになった。

普通に仕事を進めたものの、その顔がショックだった。なんで転倒した可能性がある人をそのままフロアまで歩かせるのか?何故怪我していないか確認しないのか?と思うと言ったことは普通のことではあるけれど、やっぱり怖がらせてしまったのかな。

介護の男の子の方が駆けて来るのも見えた。何されるんだろう?という雰囲気で。

そんなひどいことしないよ、私たち。

その後、施設中を駆け回って回診後の仕事をしていると真剣な面持ちでヒソヒソ言っている子たちを目にする。

そんな一日だったもので昨日はへこんだ。へこむ必要ないのに。

けれども何も言って来なければ何が大事で何故、どんな場面でどんなことを言わなければならないのか?はいちいち説明するのは止めよう。

*****

翌朝は割とスッキリ目覚めた。ただ、行くのが憂鬱だった。

でも、いいだろう。距離を置いたり待ったり。そして言い訳せず。

すると朝も早くから排泄介助をしている昨日の子が「おはよう。良い天気だねえ。」と言って来る。

そうだね。良い天気だね。

「良い日曜日だ。」

そうだね。

それで良いのかよ。。。と思うものの、いいよ、それで・・・と思う。

各フロア、申し送りに回ると、一階で何と例のお粥に変更してくれた介護の方が居た。

言わなきゃなー。会っちゃったもんなー・・と思いつつ、「〇〇さんの米飯がお粥になった件だけど・・・」と隣に座って自分はこう思うということを伝えた。

けれども、今までは看護がそこまで介入しなかったかも知れないよね。でも、もうワンステップ欲しかった。こちらにも教えて欲しかったという旨を伝えた。

するとほんの少したじろくような感じが伺えたものの「そうですか。それはすみませんでした。」と話しを続けてくれて、以前は看護に回すと逆に一気にペーストやミキサーなどに落とされたという話を聴かせてくれた。

そして「私もやっぱりごはんを食べて貰いたいですし。そこまで考えていてくれたなら・・・」

という口上を聴いて「!!!!」と衝撃を受けた。

今、何ておっしゃった?と思ったのだ。

思わず”ごはんを食べて貰いたい???”と言葉を拾って繰り返してしまった。

「はい。そうなんです。」

何でもない言葉だとは思うけれど、これがどんなに感動する言葉か。好きなものを食べて貰いたい、ごはんを食べて貰いたい。そう思ってくれているんだ!

分かった!話して良かった!ありがとうございます!と泣きそうになった。もちろん傍目からは無表情に見えるのが私らしいけど。

その後、上の階に行くと申し送りに来たはずなのに事件に遭遇し、その時も介護の人の普通人らしき発想に助けられた。

最後に受けたさらに上の階の申し送りは昨日回診の際にたちはだかった子だったのだけど、まあ、これも見事に全然違う話をする。

仲間うちで色々言ってスッキリしたのかな。でも、真意は伝わらっていないんだろうな。

何かが挟まって邪魔な感じというか違和感はあるものの、昨日よりはましな日。

表皮剥離をトランスの度に繰り返す人の背中にリント布を貼って一日目、布があまり心地よくないと嫌がられる。

片麻痺でトイレで立ち上がる際に滑りやすい人の手すりにラバーを巻いたら、これは笑顔で「助かったわ。でも、もうちょっと位置が下なのよね。」と喜ばれる。じゃあ、もう少し下の位置にゴムを足しましょう。今日は出来なかったけど明日やりましょう。

良いことと悪いこと、よくわからないこと、嬉しいこと、今日も色んなことがあった日だった。
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今日も最後まで読んで下さってありがとうございました。あなたにとって良い一日でありますように。

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posted by かおる at 06:00| Comment(0) | 看護 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする