2016年09月29日

話せばわかるし聴けば分かる・・・っのは分かってはいるんだけど

いつぞや、ホームのナースで仕事をしている最中のこと。

ホームのエレーベーターや出入り口は入居者さんの安全性の問題という要素のために電子ロックになっている。

四桁の暗証番号を定期的に変えていて、その度職員が新しい番号を覚えるとか。

当然自分がエレベーターを降りたら、そこを離れる前に閉じるボタンを押して扉が止まるのを見届ける。誰かが乗り降りしないための責任がどんな忙しいときにもある。

ところが、その急いでいるときに限って、エレベーターが何度も開閉する。

私は一階へ降りたところで、これからお風呂あがりの人の傷の処置やら摘便やら色んなことが待っているので焦る。

が、ものの数センチのところで何かにぶつかってはまたエレベーターが反応して開いてしまう。

くううーーーっ。なんだよ、もう、故障か?

閉まったって確認するまでその場を離れられないんだよ!

が、その閉まりかけたときに何かを挟んだ衝撃でまた開いているということに気が付いたので、「もう、いいから!早く一緒に降りて!急いでんだよ!」と誰もいないように見えるエレベーターの中に叫ぶ私。

すると、エレベーターが簡単に閉じた。

幸い周りに人はいなかったし、そのまま風呂場の仕事へダッシュした。この後、三階の仕事に戻らなければならないし。

で、休み時間のことだった。喫煙所に出る電子ロックの暗証番号もこれまた別なのだが、「ああ、やっと吸える!」と思って四桁押して外に飛び出したところ、そこに居た三人のスタッフがしんとなって後ろを観る。

わずかに閉まらないのだ。わずかに隙間を開けているかと思いきや、それが時々、もう少し広がって肩幅くらいになったり、また腕一本分くらいになったり。

私はニコチン切れ。

人さまの面前で「出るなら出る!中に戻るなら戻る!」と怒鳴った。

すると、すーーっと閉まって、電子ロックの音がかちゃり。

不思議なことに誰も何も言わなかった。

むしろ「誰だったんだろうね?」とか言っている。

私はあまりに忙しかったり他の仕事に熱中していると見えないタイプなのだが、一瞬その方々を姿の一部を観たそうだ。

それからまた時間が流れて、医務課へ戻ったとき、また、後方のドアが何かを挟んで閉まらないよ。

思わず「ちょっと、ちょっと。思い出して。あなた方になるとドアから入らんでも好きなところ行ける人、多いよ。」。

すると、耳鳴りに近いような小さな声で、多分小柄なお婆ちゃんの声だったと思う。”あ、そか。つい習慣でドアやエレベーターを使っちまう。”

っていうか、何でついて来るねん。生身の人間は走り回ると息切れするんだよ。

”いや、なんか、あんた、行く先々で面白いことがあるから。”

そ、それでついて来るのは良いけど、邪魔しないでね。あ。むしろ仕事手伝ってほしいわ。

その頃にはだいぶんお姿のシルエットも見えて来ていたのだけど。

”できんもん。”と笑っていた。

終了時間を過ぎていよいよ帰る時間。玄関の外までついて来る気配がないので良かったなあと思っていたら、問いかけてもいないのにまた声が。

”いやあ、外出て車に乗ると具合悪くて、歩いてでも杖じゃきつい。ましてやここに入れなくなったら困るし。”

自殺じゃないねえ。全うされているね。もう本当は痛くないし具合悪くないんだよ。でも、ここは多分馴染みの場所なんだよね。きっと落ち着くのかな。

とにかく、私は帰らなければならないけど、またそのうち来るね。ゆっくりしててね。

あ、なんか、仕事の下準備してくれといても良いよ。

”無理。”と言って笑う声が聞こえた。

それより何より、知らない人が見ると大丈夫か?この人の独語。と思われても仕方がない場面を数人に観られたのだけど、不思議とそれに異常なほど反応する人はいなかった。

さすが老舗のような特養だ。
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今日も最後まで読んで下さってありがとうございました。あなたにとって良い一日でありますように。


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