2017年05月17日

ノンバーバル過ぎ

その日の少し前、多分1〜2週間前だったか。

K姉さんが「Aさんもキャッチボールに参加させてだって♪」とウキウキしていた。

そのAさんというのがお若いながら管理職の方なのだがバリバリ野球部に所属していた方。

まあ見るからにそういうタイプの男性なのだろうなーと言うのは分かった。

私は”ああ、そうですか。良いですよ。”と答えていただのだがIさんが無反応。

K姉さんは「ねえねえ、良い?良い?」と無邪気にIさんに何度も言うのだが私はその表情を見ていて”もうやめとけ。嫌がってる。”と思った。ほとんどブレがない人で顔に出さない人なのだが付き合ううちに段々分かるようになって来たのだ。それが嫌なことなのか、好ましいことなのか。

もっとも、何がどんな理由で嫌だとか好きだとか言う価値観はまるで分からないけれど。

週に1回、たまたま勤務が合えば3回出来るキャッチボール。その前のときは、かけっこするようにボールを取り合いIさんですら分かりやすい笑顔だったし、その日も二人でやっているときまでは何のかんの会話しながら機嫌が良さそうだった。

ところが後からK姉さんがやって来て「いよいよAさんが来るって。教えてくれるってよ。」と言ってから、空気がズーーンと沈んだ。

え?何?と思うのだが、おそらくほとんどの人には、この”ずーん・・・”という沈みが分からない。

Iさんはボールを投げながら「(勝手に)教わって下さい。」と呟いた。

しかしK姉さんは気が付かない。

やがてガタイがよろしいAさんがやって来ると、IさんはグローブをはずしAさんに渡しつつ「どうぞ。」と言って自分は地面に座り込んだ。

まあ、グローブが無いからだろうとしか思っていないK姉さんは普通に三人でキャッチボールを始めたが、私は気になって仕方ない。

あたりまえに彼は上手だったし、これぞ野球という感じの投げ方だった。

しかし、皆そうなのだけど、K姉さんはびしっと投げるのに私に投げるときは優しくひょいとしか投げないな。見かねたK姉さんが「尾崎さんを見かけで判断しないで。本気で投げても何でも取るよ。」と言ったのだが優しく優しく投げて来るので少しいらっとする。2対1でやると余計にその差が分かるから。

Iさんも最初はそうだったが、最近では本気で投げて来るようになったのでちょっと喜んだ矢先だった。

それは良いのだけど、途中でK姉さんや私がIさんと交代しようとしても「私はいい。」と言って立とうとしない。

私はその様相を見て一回目であきらめたのだがK姉さんは何度か声をかけていた。

途中でそうだと思い付き、「もう一個のボールで二人でやろうよ。どちらか素手で。二手に別れよう。」と言ったのだが「いや、いい。」と言われた。絶対様子が変。

実はまだ50分だったけれど「はい、55分です。」と言って終えた私。

他の人は一階へ、そして喫煙者の私とIさんは三階へと続くエレベーターに乗る。いつも二人きりになる屋上への階段に腰掛けていつものようにタバコに火をつけたが。

どうしたの?と訊きたいが訊けない。怒っているの?と言えない。

この時間を過ぎれば本当にいつものように余所余所しく仕事をするので訊くには今しかないが。

とうとう何が嫌だったのかが訊けなかった。いや、多分訊いても「別に。」と答えるんだろうな。


一番最初のとき、キャッチボールしようと二人でいる屋上で約束した際、私がK姉さんに話してしまったのだが。

K姉さんは「屋上じゃなくて外でやろうよ。地上で。屋上、怖いもん。」と言っていた。

なので一番最初の頃、屋上でタバコを吸いながら、「(わざわざ下に降りるの)面倒くせーなー。」とIさんが言ったとき「確かに・・・」と私も思った。

結果的に地上でやった方が思い切り出来たし今では「もっと広いところでやりたいなあ。」とIさんも言うようになった。

ただ、気軽に屋上で二人でという気分を壊したのは私だったことを思い出す。

今はK姉さんが色んな人に「Iさんと尾崎さんとキャッチボールやってるの。あのね、尾崎さんはね・・」と話しているようなのだが。

嬉しくて楽しくて話したくなるその気持ちはよく分かる。

でも、多分、私も同じことをして何かを壊してしまったんだろうなあ・・・という気がしてならない。

人に言うためにやっているのでもないし、仲が良いアピールがしたいわけでもない。

何となくそのあたりにあの不機嫌さのヒントがあるような気がしないでもない。

もしも訊いてみたら、「別に。」と言われるか、もしくは、何度か見かけたあの空洞のような目で本気の「分からない。」という呟きが返って来そうだ。

とにかく”Do not touch me!”という無言の圧力を放ちつつ、それなのに隣でタバコを吸っているその人を見てないふりして見ていた。

”分かったよ。触らない。”と心の中で答えて数分一服した後、同時に立ち上がってそれぞれの持ち場へ帰った。予想通り、それっきりだったけれど。
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今日も最後まで読んで下さってありがとうございました。あなたにとって良い一日でありますように。

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posted by かおる at 06:00| Comment(0) | ??? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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