2019年05月07日

呼吸

もうすぐお看取りになる利用者様に若い派遣ちゃんが一生懸命水分補給をする。

でも、もう呑み込めない。

しかし、一生懸命口を開けてくれる。


人それぞれだが嚥下の仕方は少しづつ違う個性を持っている。

その方は頬の方へ少量入れてあげると、ご自身の下で巻きとって飲み込んでくれる。

だからトロミを付けた水分を、色んな味で試してみる。

やがて口を開ける力が無くなって来る時期が来たので、今度はカテーテルチップのシリンジでそっと頬のところへ入れる。

うん、まだまだ欲しいと思ってくれるし、飲み込んでくれる。

しかしホームには90越え、100越えの方も沢山居て、例え頑張っても循環不全が押し寄せて意志とは裏腹に手足が真っ青になって行く人もいる。

若いナースちゃんは「どうしてお子さん帰ったんですか?どうしてだろ?」とまっすぐに嘆く。

しかし、人それぞれの事情があるのだ。

それは時に、その利用者様よりずっと若い身内の方の不幸があって連日眠れていないとか、あるいは長年の介護に疲れたりとか、中には昔色々なことがあったかも知れない。

本当に、本当に人それぞれなのだ。

プライバシーというものがあるのでそのナースちゃんには説明できるところが限られているのだが、出来る限りの説明をした。

賢い子でもあるので何かを感じ取り「分かりました」と頷く。

そこへ介護福祉士のK登場。

「この方はね、居配では一切飲み食いしないの。調子が良いときを見計らって起こして食堂に連れて行って、あとでちゃんと飲ましますからね。気持ちは分かりますよ。」と彼女に優しく語りかけてくれた。

そう。

帰りなさい。とても優しい優しいナースちゃん。

あなたの真剣さに涙がこぼれそうだった。

そして、ふと気づくと私とご家族のやり取りを観て泣いている介護職の子も居る。

皆がそれぞれの思いで何が正しいのかは分からないまま懸命にその人のことを考えている。

人が生きるということには大きな意味がある。

可愛らしい一人のお婆ちゃんの呼吸に耳を澄ませて、そうハッキリ思う。
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今日も最後まで読んで下さってありがとうございました。あなたにとって良い一日でありますように。
posted by かおる at 06:00| Comment(0) | ヒューマン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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